円周率πのお話-解説-
円周率πの重要性
数学において重要な定数がいくつかあります。\(e\)、\(i=\sqrt{-1}\)、そしてここで取り上げる円周率 \(π\) などです。実はこの3つの数は、不思議な縁で結びついてもいます。\(π\) は、円における円周の長さを \(L\)、半径を \(r\) とすると、\(π=L/(2r)\) であることが、円周率の定義です。\(π\) にはいろんな面白い性質があります。\(π\) は無理数であり、かつ超越数(代数方程式の解になりえない)でもあります。
\(π\) に関する問題
【問題1】
円周率を \(π\) とするとき、次の不等式を証明してください。
(1)\(π>3\) (中学受験問題?)
(2)\(π>3.05\) (東京大学)
【解答】
(1)半径 \(1\) の円に内接する正6角形を考えます。円周率を \(π\) とすると
円周の長さ \(L=2π\) 正六角形の周囲の長さ \(L’=6\)
\(L>L’\) より \(2π>6\) ⇔ \(π>3\)
(2)(1)とおなじように正多角形を考えればいいと予想はつきます。
半径 \(1\) の正8角形の周長と円周の長さを比較すればできます。
【問題2】
\(π\)を円周率、\(e\) を自然対数の低とするとき、次の不等式を証明してください。
\(\displaystyle \int_{ 0 }^{ π } e^xsin^2x dx>8\)
(東京大学)
【解答2】
\(\displaystyle \int_{ 0 }^{ π } e^xsin^2x dx=\displaystyle \int_{ 0 }^{ π } e^x(1-cos2x)/2dx\)
=\(2/5・(e^π-1)\)
ここで、平均値の定理より、\(x>0\) に対し、\(0<c<x\) を満たす \(c\) が存在し
\(e^x-e^0=e^c(x-0)\) ⇔ \(e^x>1+x\)
\(e^0.04>1.04\) から \(e^π>(2.7x1.04)^3>21\)
よって、
\(\displaystyle \int_{ 0 }^{ π } e^xsin^2x dx>2/5(e^π-1)>8\)
【問題3】
\(π\) を円周率とし、\(I_n=π^{n+1}/n!\displaystyle \int_{0}^{1} t^n(1-t)^nsinπt dt\) \((n=0,1,2・・・・・)\) とします。
(1)\(I_{n+1}=(4n+2)/π・I_n-I_{n-1}\) を示してください。\(n=1,2,3・・・・・・)\)
(2)任意の正の整数に対して、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a^nI_n\) を求めてください。
任意の正の数 \(b\) に対して \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } b^n/n!= 0\) であることを用いてもよい。
(3)\(π\) が無理数であることを示してください。
(大阪大学)
【解答3】
問題の結果は、高校数学のレベルを超える問題です。導入をつけることで、高校生にも解けるように考えています。
(1)部分積分をきちんとすれば、証明できます。
(2)\(0≦t≦1\) のとき
\(0≦\vert t^n(1-t)^nsinπt\vert ≦1\) ですから
\(0≦\vert a^nI_n \vert ≦a^nπ^{n+1}/n!・\displaystyle \int_{0}^{1} 1 dx=π・(aπ)^n/n!\)
ここで、\(n→∞\) のとき、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (aπ)^n/n!= 0\) だから、
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a^nI_n=0\)
(3) 背理法を使います。
\(π\) が有理数であるとすると、\(π=p/q\) \((p,qは0でない互いに素な正整数)\)
(1) の結果より、\(I_{n+1}=(4n+2)q/p・I_n-I_{n-1}\)
\(p^{n+1}I_{n+1}-q(4n+2)(p^nI_n)-p^n(p^{n-1}I_{n-1})\)
さらに、\(p^0I_0=2、P^1I_1=4q\) より
\(p^nI_n\) は整数で \(I_n≠0\) だから、\(p^nI_n≧1\)
ところが、(2) から \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } p^nI_n=0\) となり矛盾する。
従って、\(π\) は無理数です。
【問題4】
\(I_n=\displaystyle \int_{0}^{π/2}sin^nx dx=\displaystyle \int_{0}^{ π/2} cos^nx dx\) とすると
(1) \(I_nとI_{n-2}\) の漸化式を求めてください。 ただし \(n≧2\)
(2) \(I_n\) を求めてください。
(3) \(S_n=\displaystyle \int_{0}^{π/2}x^2cos^{2n}x dx\) とすると
\(S_{n-1}-2n/(2n-1)・S_n=2/(2n(2n-1))・I_{2n} (n≧1)\) であることを示してください。
(4) \(N\) は整数で \(N≧1\) とすると、次式をしめしてください。
\(S_N=((2N-1)(2n-3)・・・・・・・5・3・1)/(2N(2N-2)・・・・・・・・4・2)・π/4(π^2/6-\displaystyle \sum_{ n= 1 }^{ N } 1/n^2)\)
(5) \(S_N≦1/(2N+2)・((2N-1)(2n-3)・・・・・・・5・3・1)/(2N(2N-2)・・・・・・・・4・2)・(π/2)^3\)
であることを示してください。
(6) \(\displaystyle \sum_{ n= 1 }^{ ∞} 1/n^2=π^2/6\) であることを示してください。
(日本女子大学)
【解答4】
\(\displaystyle \sum_{ n= 1 }^{ ∞} 1/n^2=π^2/6\) をバーゼル問題といいます。
\(\displaystyle \sum_{ n= 1 }^{ ∞} 1/n^s\) をリーマンのζ関数ζ(s)と言いますが、この \(s=2\) の場合です。
有名な数学者オイラーが、スイスのバーゼルの有名な数学者一家のベルヌーイ一家のところににいたときに考察した問題であることから、バーゼル問題と言われています。
\(ζ(s)=0\) の複素零点に関する予想として、有名なリーマン予想があります。160年間誰も証明できていません。
リーマン予想については、次のリンクを参照してください。 リーマン予想
明らかに高校レベルを超える大学レベルの問題ですが、丁寧な導入があるので、それにのればいいわけです。
解析学のマクローリン展開を知っていれば、この方法でも証明できます。オイラーはこの方法で証明したとされています。
(1) はWallisの公式です。
to be continued