微積分の問題-解答編-
数Ⅲの微積分の問題
数学の2次試験では、数Ⅲの分野の問題が多く出題されます。なかでも微積分に関する問題は、大学の解析学の基本となるものですから、重要視されています。
計算の面倒な問題も多いですから、丁寧に答案を書くようにしましょう。ただし、時間を忘れてはいけません。2016年最後の問題で有終の美を飾り、来るべき2017年を迎えましょう。頑張れ、受験生。
数Ⅲの微積分問題
【問題1】
\(0\)以上の整数\(n\)に対して、次の関数\(f_n(x)=x^ne^{1-x}\)および定積分\(a_n=\displaystyle \int_{0}^{1} f_n(x) dx\)を考えます。
(1) \(n≧1\)に対して、区間 \(0≦x≦1\)において、\(0≦f_n(x)≦1\)および \(0<a_n<1\)が成り立つことを示してください。
(2) \(a_1\)を求めてください。また、\(n>1\)で、\(a_n,a_{n-1}\)の間に成り立つ漸化式を求めてください。
(3) \(e\)が無理数であることを示してください。
(大阪大学)
【解答1】
(1) \(0≦x≦1\)において、
\(f_n'(x)=(n-x)x^{n-1}e^{1-x}≧0\) より\(f_n(x)\)は、区間で単調増加します。よって、\(0=f_n(0)≦f_n(x)≦f_n(1)=1\)
上式で、等号は、\(x=0 または1\)のとき以外は成立しないので、
\(\displaystyle \int_{0}^{1}0dx<\displaystyle \int_{0}^{1} f_n(x) dx<\displaystyle \int_{0}^{1}1dx\)
従って、\(0<a_n<1\)
(2) \(n≧1\)で
\(a_n=\displaystyle \int_{0}^{1} f_n(x) dx=-1+na_{n-1}\)・・・・・・・・① で \(a_0=\displaystyle \int_{0}^{1} e^{1-x}dx=e-1\)
より、\(a_1=e-2\)
(3) \(e\)が無理数でないと仮定すると、\(e=p/q (p,qは整数,q≠0)\)とかけます。①式より、\(qa_n=-q+n(qa_{n-1}\)であり、
\(qa_1=q(e-2)=p-2q=整数\)なので、\(qa_n\)は整数となります。\(qa_n≠0\)より、\(\vert qa_n \vert≧1\)
また、(2)より、\(a_{n-1}=(a_n+1)/n\) さらに(1)より、\(a_{n-1}<2/n\)となります。
従って、\(0<qa_n<2q/(n+1)\) これに、\(n→∞\)とすれば、\(qa_n→0\)となり、矛盾となります。よって、\(e\)は無理数ということになります。
(注) \(e\)の無理数性まで示させる高度な問題です。
【問題2】
定積分\(\displaystyle \int_{0}^{π} (e^{-x}-pcosx-qsinx)^2 dx\) の値を最小にする実数\(p,q\)の値を求めてください。
(筑波大学)
【解答2】
計算あるのみです。正確でスピーディーな計算力を養っておきましょう。
\(\displaystyle \int_{0}^{π} (e^{-x}-pcosx-qsinx)^2 dx\)は、括弧のなかを計算し、積分すれば\(p,q\)の式になります。
\(\displaystyle \int_{0}^{π} (e^{-x}-pcosx-qsinx)^2 dx\)
=\(π/2p^2+π/2q^2-(1+e^{-π})p-(1+e^{-π})q+1/2(1-e^{-2π}\)となりますから、
\(p=q=(1+e^{-π})/π\)のときに、最小となります。
【問題3】
\(x≧0\)を定義域とする関数列 \(f_0(x),f_1(x),・・・・・・・・・・f_n(x),・・・・・・・・・・\)を次のように定めます。
\(f_0(x)=1, f_n(x)=\displaystyle \int_{0}^{x} f_{n-1}(x)/(t+1)dx (n≧1)\)
(1) \(f_1(x),f_2(x),f_3(x)\)を求めてください。
(2) \(f_n(x)\)をもとめてください。
(3) 曲線\(y=f_n(x) (n≧1)\)、直線\(x=a(a>0)\)および\(x軸\)で囲まれる図形の面積を\(S_n(a)\)とします。
このとき、次式 \(S_n(a)+S_{n+1}(a)=(a+1)/(n+1)!\)を満たす\(a\)の値を求めてください。
(4) 無限級数 \(\displaystyle \sum_{k= 1 }^{∞} (-1)^k/k!\)の値を求めてください。
(東京医科歯科大学)
【解答3】
略解のみ(詳解は、2017年お正月に公開します。)
(1) \(f_1(x)=log(x+1),f_2(x)=1/2(log(x+1))^2,f_3(x)=1/6(log(x+1))^3\)
(2) \(f_n(x)=1/n!(log(x+1))^n\)
(3) \(a=e-1\)
(4) \(\displaystyle \sum_{k= 1 }^{∞} (-1)^k/k!=1/e-1\)
【詳解】
(1) \(f_1(x)=\displaystyle \int_{0}^{x}1/(t+1) dt=log(x+1)\)
\(f_2(x)=\displaystyle \int_{0}^{x}log(t+1)/(t+1) dt=1/2・(log(x+1))^2\)
\(f_3(x)=\displaystyle \int_{0}^{x}(log(t+1))^2/2(t+1) dt=1/6・(log(x+1))^3\)
(2) \(f_n(x)=1/n!・(log(x+1))^n\)と予想できますから、数学的帰納法で容易に証明できます。やってみましょう。
(3) \(f_n(0)=0,x>0でf_n(x)>0\)だから、
\(S_n(a)+S_{n+1}(a)=1/n!・\displaystyle \int_{0}^{a}(log(t+1))^ndx+1/(n+1)!・\displaystyle \int_{0}^{a}(log(t+1))^{n+1}dx\)
=\((a+1)/(n+1)!・(log(a+1))^{n+1}\) となりますから、
条件式から、\((a+1)/(n+1)!・(log(a+1))^{n+1}=(a+1)/(n+1)!\)
従って、\((log(a+1))^{n+1}=1\) となります。\(log(a+1)>0\)より、\(log(a+1)=1\) よって、\(a=e-1\)
(4) 当然1~3がヒントになっています。無限級数の和をどうやって求めるのか。挟み撃ちがにおいます。
(3)より\(a=e-1\)のときに、\(e/n!=S_{n-1}(a)+S_{n}(a)\)
よって、\(\displaystyle \sum_{k= 1}^{n} (-1)^k/k!\)
=\(1/e・\displaystyle \sum_{k= 1 }^{n} (-1)^k(S_{k-1}(a)+S_k(a)\)
また、\(\displaystyle \sum_{k= 1}^{n} (-1)^k(S_{k-1}+S_k\)
=\(-S_0+(-1)^nS_n\) より
\((\displaystyle \sum_{k= 1 }^{n} (-1)^k/k!=1/e・(-S_0(a)+(-1)^nS_n(a)\)
\(S_0=e-1\)で、\(f_n(x)はx≧0\)で単調増加だから、
\(0≦S_n(a)=1/n!・\displaystyle \int_{0}^{a}(log(x+1))^ndx≦a/n!・(log(a+1))^n=(e-1)/n!\)
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (e-1)/n!=0\)より、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty }S_n(a)=0\)
よって、\(\displaystyle \sum_{k= 1 }^{∞} (-1)^k/k!=1/e・(-S_0(a))=1/e・(1-e)=1/e-1\)