方程式の解の公式とは何か?

代数方程式の解の公式

もうすでに、1次方程式や2次方程式は学んでこられ、中学校3年生で2次方程式の解の公式を習われたと思います。1次方程式は易しいですが、2次方程式では解の公式を学び暗記されていると思います。\(a≠0 のとき ax^2+bx+c=0\) の解は \(x=-b±\sqrt{b^2-4ac}/2a\) で表されるというものです。これは2次方程式を平方完成することにより求められるものです。そして \(D=b^2-4ac\) を判別式ということも学びました。中学、高校と3次方程式、4次方程式も出てきますが、2次方程式の解の公式に相当するものは習っていません。3次方程式以上の高次方程式は、何らかの方法でより低次数の方程式に帰着されたり、因数分解ができたり、テクニックを使ったりするものです。では3次以上の方程式にも解の公式があるのでしょうか。実は、3次方程式、4次方程式には解の公式が存在します。ところが5次以上の方程式には一般的な解の公式は存在しないのです。

3次方程式の解の公式

3次方程式以上の解の公式や、5次以上の高次方程式が代数的に解ける条件を示したいわゆるガロワの群論は、大学の数学の専門課程に入ってから学びます。3次方程式の解の公式も相当複雑なものですから、代数方程式の一般論ということで大学の専門課程で学ぶことになっています。ここでは、3次方程式について考察しておきましょう。3次方程式ならなんとかなると思います。代数方程式の解の公式とは、全ての解が代数方程式の係数の四則演算と \(n乗根\)で表せるかと言うことを言っています。

3次方程式の解の公式

一般的に、3次方程式の解の公式は、カルダノの方法と言われています。カルダノの公式については、すでに記事を投稿しています。  カルダノの方法
 また4次方程式の解の公式は、フェラリの公式と言われています。

では、解の公式はどうすれば求まるのでしょうか。2次方程式について少し考えてみましょう。
一般の 2次方程式は \(ax^2+bx+c=0\) ですが、\(a≠0\) のもとで有理変換すると
\(x^2+px+q=0\) ・・・・・・・・・①
とすることができます。この①の2つの解を \(α、β\) とします。解と係数の関係から
\(α+β=-p、α・β=q\) ・・・・・・・・② が成り立ちます。
そして、ここで、\(α-β\) の値が求めることができれば、\(α+β、α-β\) の2つの値から解を求めることができます。
②は対称式で、\(Δ=α-β\) は交代式でこれを差積といいます。ところが \(Δ^2\) は対称式となり
\(Δ^2=(α-β)^2=p^2-4q\) となり \(α-β=±\sqrt{p^2-4q}\)
よって、\(α=((α+β)+(α-β))/2\)、 \(β=((α+β)-(α-β))/2\)
となります。だから2次方程式は解けるのです。解の公式は、代数方程式のすべての解を、各係数の四則演算と \(n\)乗根 で表すことができるかということなのです。
もう気づかれた方もいると思いますが、差積の2乗がじつは判別式なのです。

3次方程式の場合はどうなるでしょうか。

カルダノの方法では、3次方程式を有理変換し、\(x^3+px+q=0\) から始めます。
この解を、\(α、β、γ\) とすると、
解と係数の関係は、
\(α+β+γ=0、αβ+βγ+γα=p、αβγ=-q\) です。
そして、差積 \(Δ\) は
\(Δ=(α-β)(α-γ)(β-γ)\)
そして、\(Δ^2=-27p^3-27q^2\) でこれが3次方程式の判別式です。この計算は少し複雑ですが、じっくりやれば導出できます。
それでは、解 \(α、β、γ\) はどうやって求めるのか。

\(1\) の 3乗根 つまり \(x^3=1\) の \(1\) でない複素数解は一般に \(ω\) とおけることはよく知られています。
\(ω^3=1、ω^2+ω+1=0\) です。これから、

\(α=1/3・((α+β+γ)+(α+ωβ+ω^2γ)+(α+ω^2+ωγ)\)
\(β=1/3・((α+β+γ)+ω^2(α+ωβ+ω^2γ)+ω(α+ω^2+ωγ)\)
\(γ=1/3・((α+β+γ)+ω(α+ωβ+ω^2γ)+ω^2(α+ω^2+ωγ)\)

となります。実際に計算してみれば確かにそうなることが容易にわかります。
2次方程式では、解の和とその差積で各解が表せましたから、解の公式が係数の四則と平方根で容易に表せました。
そこで3次方程式では、上の式の分子が、3次方程式 \(x^3+px+q=0\) の係数 \(p,q\) で表せればいいことになります。
第1項は、解と係数から \(α+β+γ=0\) です。
第2項、第3項が \(p,q\) の四則演算と3乗根で表わせればいいことになります。

少し面倒ですが、\((α+ωβ+ω^2γ)、(α+ω^2+ωγ)\) と \((α+ωβ+ω^2γ)^2、(α+ω^2+ωγ)^2\)は \(p,q\)で表せませんが、
\((α+ωβ+ω^2γ)^3、(α+ω^2+ωγ)^3\) は 係数\(p,q\) と 差積\(Δ=(α-β)(α-γ)(β-γ)\) で表すことができるのです。
差積\(Δ\) は、係数の四則演算と平方根で表すことができますから、3次方程式の解の公式が導けるのです。

カルダノの方法の解の公式は

\(x^3+px+q=0\) に対して、

\(x=\sqrt[ 3]{-q/2+\sqrt{(q/2)^2+(p/3)^3}}+\sqrt[ 3]{-q/2-\sqrt{(q/2)^2+(p/3)^3}}\) ですが、

実は、この第1項と第2項は、このようにして求めたもので、その意味するところはこういうことなのです。

4次方程式の解の公式はフェラリの公式と言われますが、フェラリの変数変換の過程で3次方程式が出てきますので、カルダノの方法で解けることになります。
では5次方程式はどうでしょうか。残念ながら多数の数学者の多年にわたる研究でも解の公式は見つかりませんでした。
そして、スウェーデンのアーベルとフランスのガロワという二人の若い天才数学者によって、5次以上の代数方程式には一般的な解の公式は存在しないことが
証明されました。もちろん代数学の基本定理によって解が存在することは保証されていますが、一般的ないわゆる解の公式は存在しません。
ある高次代数方程式は、解を明確に求めることができますが、さらにガロワは代数方程式に解の公式が存在するための必要十分条件をみつけました。
これが有名なガロワ群でありガロワ理論です。これについては、改めて書きましょう。

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