難関大数学の基本-解答編-

数学ⅠA、ⅡBの確認

理系数学では、数ⅠA、ⅡB、Ⅲが試験範囲であり、数Ⅲ重視の出題がされますが、数ⅠA,ⅡBの項目も出題されます。これらは、かなり難しくなる傾向があります。ここでは、文系ですがかなり難し目の問題を出題される一橋大学の数学の問題をやってみましょう。問題のリンクは次です。難関大数学の基本-数ⅠAⅡB(一橋大)-

数ⅠA、ⅡBの問題 (一橋大学:120分)

【問題1】

\(k\)を正の整数とします。\(5n^2-2kn+1<0\)を満たす\(n\)がちょうど1つあるような\(k\)を求めてください。

【解答1】

条件より、\(5x^2-2kx+1<0\)を満たす実数\(x\)が存在します。これから、
\((k-\sqrt{k^2-5})/5<x<(k+\sqrt{k^2-5})\)・・・・・・・①
従って、これを\(α<x<β、α<β\)とすると①を満たす整数値が1つであるような\(k\)を求めればよいことになります。
これは、\(0<β-α≦2\sqrt{k^2-5}/5\)であることが必要です。
これから、\(5<k^2≦30\) から、\(k=3,4,5\)
\(k=3\)のとき、①を満たす整数xは存在しない。
\(k=4\)のとき、\((4-\sqrt{11})/5<x<(4+\sqrt{11})/5\)から、これを満たす整数は\(1\)
\(k=5\)のとき、同様にこれを満たす整数は、\(1\)
従って、求める\(k=4,5\)

【問題2】

3次方程式\(x^3+ax^2+bx+c=0\)は相異なる3つの解\(p,q,r\)をもつとし、さらに\(2p^2-1,2q-1,2r-1\)も同じ方程式の相異なる3つの解であるとします。\(a,b,c,p,q,r\)の組を求めてください。

【解答2】

3つの解の組\({p,q,r}\)と\({2p^2-1,2q-1,2r-1}\)は一致することになります。\(q,r\)の対称性を考えれば、次の4つの組を考えればよいことになります。
1)\(p=2p^2-1,q=2q-1,r=2r-1\)
2)\(p=2p^2-1,q=2r-1,r=2q-1\)
3)\(p=2q-1,q=2p^2-1,r=2r-1\)
4)\(p=2q-1,q=2r-1,r=2p-1\)

これより、1)2)は題意に不適で、
3)のとき、\((p,q,r)=(-3/4,1/8,1),(-3/4,1,1/8)\)
4)のとき\((p,q,r)=(-7/8、1/16,17/32),(-7/8,17/32,1/16)\)

また、解と係数の関係より、
\(a=-(p+q+r),b=pq+qr+rp、c=-pqr\)ですから、
3)のとき、\((a,b,c)=(-3/8,-23/32,3/32)\)
4)のとき、\((a,b,c)=(9/32、-249/5812,119/4096)\)

【問題3】

\(a\)を正の実数とします。点\((x,y)\)が、不等式\(x^2≦y≦x\)の領域を動くとき、常に\(1/2≦(x-a)^2+y≦2\)となるとします。このとき、\(a\)の値の範囲を求めてください。

【解答3】

領域\(P:x^2≦y≦x\)が、領域\(Q:1/2≦(x-a)^2+y≦2\)に含まれるような\(a\)の範囲を求めればよいことになります。
\(0≦x≦1\)で\(y=x^2\)が\(y=1/2-((x-a)^2\)の上側にあることが必要で、点\(O\),\((1,1)\)が\(y≦2-(x-a)^2\)にあることが、\(P \subset Q\)となる条件です。これは、\(a^2≦2\)から\(0≦a≦\sqrt{2}\)また、\(a^2≧1\) よって\(1≦a≦\sqrt{2}\)となります。

【問題4】

正4面体\(OABC\)の1辺の長さを\(1\)とします。辺\(OA\)を\(2:1\)に内分する点を\(P\)、辺\(OB\)を\(1:2\)に内分する点を\(Q\)とし、\(0<t<1\)を満たす\(t\)に対して、\(OC\)を\(t:1-t\)にない分する点を\(R\)とします。
(1)\(PQ\)の長さを求めてください。
(2)\(△PQR\)の面積が最小になるときの\(t\)の値を求めてください。

【解答4】

ベクトルで考えるのが、常套手段でしょう。

(1)\(\overrightarrow{OA}=\vec{ a }\),\(\overrightarrow{OB}=\vec{b}\),\(\overrightarrow{OC}=\vec{c}\)とします。
\(\vert \vec{ a } \vert=\vert \vec{b} \vert=\vert \vec{c} \vert=1\)
\(\vec{ a } \cdot \vec{ b }=\vec{b} \cdot \vec{c}=1/2\)
\(\overrightarrow{OP}=2/3・\vec{ a }\)、\(\overrightarrow{OQ}=1/3・\vec{b}\)から、
\(\overrightarrow{QP}=1/3・(2\vec{ a }-\vec{b})\)となります。
\((\vert 2\vec{ a }-\vec{b}\vert)^2=3\) よって、\(PQ=\vert \overrightarrow{QP}\vert=\sqrt{3}/3\)

(2)同様にして、\(\vert \overrightarrow{QR}\vert=1/3・\vert 3t\vec{c}-\vec{b}\vert\)より
\(\vert \overrightarrow{QR}\vert=(\sqrt{9t^2-3t+1})/3\)
また、\(\overrightarrow{QP} \cdot \ \overrightarrow{QR}=3/2・t\)だから、
\(△PQR=1/2・\sqrt{\vert \overrightarrow{QP}\vert^2・\vert \overrightarrow{QR}\vert^2-(\overrightarrow{QP} \cdot \ \overrightarrow{QR})^2}\)
=\(1/6・\sqrt{(33t^2-12t+4)/12}\) から、\(t=2/11\)のとき面積は最小となります。

【問題5】

\(n\)を\(3\)以上の整数とします。\(2n\)枚のカードがあり、そのうち赤いカードの枚数が\(6\)、白いカードの枚数は、\(2n-6\)とします。これらの\(2n\)枚のカードを無作為に、箱\(A\)と箱\(B\)に入れるものとします。このとき、2つの箱の少なくとも一方に赤いカードがちょうど\(k\)枚入っている確率を\(p_k\)とします。
(1)\(p_2\)を\(n\)で表し、\(p_2\)を最大にする\(n\)を求めてください。
(2)\(p_1+p_2<p_0+p_3\)を満たす\(n\)を求めてください。

【解答5】

カードの入れ方は、全部で \({}_{2n} \mathrm{ C }_n\)通りあります。
(1)箱\(A\)に赤が2枚入る方法は、\({}_6 \mathrm{ C }_2・{}_{2n-6} \mathrm{ C }_{n-2}\)通り、箱\(B\)に赤が2枚入る方法も同じですから、
\(p_2={}_6 \mathrm{ C }_2・{}_{2n-6} \mathrm{ C }_{n-2}/{}_{2n} \mathrm{ C }_n・2\)
=\(15n(n-1)(n-3)/(4(2n-1)(2n-3)(2n-5))=a_n\)とします。
\(a_{n+1}/a_n=(2n-5)(n+1)(n+2)/((2n+1)(n-1)(n-3))\)となりますから、
\(a_{n+1}>a_n\)となる\(n\)を求めると、
\((2n-5)(n+1)(n+2)>(2n+1)(n-1)(n-3)\)から、\(n<7\)であり、\(n≦6\)のとき、\(a_{n+1}>a_n\)で\(a_7=a_8\)
また、\(n≧8\)のとき、\(a_{n+1}<a_n\)
従って、求める\(n\)は、\(7,8\)です。

(2)\(p_0+p_1+p_2+p_3=1\)から、\(p_0+p_3=-(p_1+p_2)\)
よって、\(p_1+p_2<p_0+p_3\) は\(p_1+p_2<1/2\)と同値です。
\(p_1={}_6 \mathrm{ C }_1・{}_{2n-6} \mathrm{ C }_{n-1}/{}_{2n} \mathrm{ C }_n・2\)
=\(6n(n-3)(n-4)/((2n-1)(2n-3)(2n-5))\)
従って、(1)の\(p_2\)より、
\(p_1+p_2=3(7n^3-34n^2+39n)/(4(8n^3-36n^2+46n-15))\) となりますから、
\((p_1+p_2<1/2\)から、
\(5n^3-30n^2+25n+30<0\)
\((n-2)(n^2-4n-3)<0\)
これより、\(n>0\)を考えて、\(2<n<2+\sqrt{7}\)
これを満たす自然数は、\(n=3,4\)です。

 

Follow me!