2017年ノーベル賞について

ノーベル賞受賞者

毎年10月になると、世の中はノーベル賞の季節になってきます。昨年も今年もそうでしたが、日本のメディアは日本人のノーベル賞受賞に相当フォーカスしており、日本人が受賞しないと報道もそっけないものです。もう少しサイエンスも含めた世界の動向がどうなのかもしっかり伝えて欲しいものです。
昨年2016年は、ノーベル医学・生理学賞を大隅良典東工大特別栄誉教授(東大特別栄誉教授でもあります)が、オートファジーの発見で日本のマスコミも大騒ぎでしたが、物理学賞、化学賞では、日本人受賞者がなくマスコミも冷たいものでした。物理学賞は、物性物理学分野で、「トポロジカル相転移と物質におけるトポロジカル相の発見」でした。数学の位相幾何学と相転移がからんだ興味深いテーマですが、このようなものこそ一般にも詳しく説明して欲しいものです。オートファジーは詳しすぎるほどメディアで説明があり興奮状態でした。重要な発見や理論については、世の中である程度共有できたらと思います。

2017年ノーベル賞受賞者

ノーベル賞の発表順に、2017年のノーベル賞受賞者をあげてみましょう。

・ノーベル医学・生理学賞

体内時計のメカニズムを解明したアメリカの3名の研究者が選ばれました。
メーン大学のジェフリー・ホール博士、ブランダイス大学のマイケル・ロスバッシュ教授、それにロックフェラー大学のマイケル・ヤング教授の3名です。彼ら
は、植物や動物、ヒトの体内のリズムをコントロールしている遺伝子を発見し、時計遺伝子と言われています。

・ノーベル物理学賞

2016年2月のLIGOによる重力波の観測で、アメリカの3名の研究者が選ばれました。
レイナー・ワイスMIT名誉教授、バリー・バリッシュ カリフォルニア工科大名誉教授、キップ・ソーンカリフォルニア工科大名誉教授の3名です。
レーザー干渉計LIGOで2016年に重力波の観測をしており、2016年のノーベル物理学賞受賞でも全くおかしくないことでした。最近のノーベル物理学賞は物性
論と素粒子論(宇宙論)が交代で受賞しており、2015年の梶田隆章東京大学宇宙線研究所長のニュートリノ振動による物理学賞受賞がありましたから、
2016年は 物性論のトポロジカル相転移になったものと思われます。いずれも素晴らしい研究や発見ですから、受賞も何ら不思議はありません。
重力波は、アインシュタインが相対性理論で予言しており、その正しさが改めて認められたものと思われます。ただし、アインシュタイン理論も限界がありあ
らたな理論の構築が精力的になされています。東京大学宇宙線研究所でも、重力波等を観測するKAGRAが進められており、世界各地での観測は、さらなる理論
の構築につながるものと思われます。

・ノーベル化学賞

2017年のノーベル化学賞は、クライオ電子顕微鏡の開発により欧米の3名の研究者が選ばれました。
スイス、ローザンヌ大学のジャック・ドゥボシェ名誉教授、アメリカ、コロンビア大学のヨアヒム・フランク教授、それにイギリスのMRC分子生物学研究所
のリチャード・ヘンダーソン博士 の3名です。クライオと言うと、真空ポンプであるクライオポンプが有名ですが、3人は、たんぱく質などを溶液にひたして、低温に急激に冷やすことで、高い解像度で観察し、その構造を鮮明な3次元の画像にして解析できるようにしました。

・ノーベル文学賞

最近は、毎年村上春樹のノーベル賞受賞がファンの間で待望されておりましたが、今年も村上春樹の受賞はなりませんでした。やはり、日本独自の文学や思想
を構築した川端康成や大江健三郎などとは、スエーデンアカデミーの評価が異なるのかもしれません。かつてのノーベル賞候補であった谷崎潤一郎、三島由紀
夫や実存主義   文学を書いた安部公房などとは、少し違うような気がします。
一方、2017年のノーベル文学賞は、カズオ・イシグロという日系イギリス人が受賞しました。長崎生まれの英国国籍のイギリス人ですが、彼の根本には日本と
日本人の両親、考え方がねずいており、共感の持てる作家の登場でありさらにカフカなどの実存哲学が根底にあるようで、昨年のわけの解らないボブ・ディラ
ンのような奇をてらうような受賞ではなく正統派の受賞であったと思います。カズオ・イシグロ氏は素晴らしいQuee’s English を話される方でこのような人
が世に出たことは、日本のさらなるグローバル化に必要性を示唆するものと思います。

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